ADHDの子供の問題行動は、まわりの人を巻き込み互いの関係を悪化させやすい。
親は障害の認識がなければ特に、つい子供を叱りすぎてしまいやすいでしょう。
子供は次第に自尊心が低くなり、先々心の問題へと発展しやすく、悪循環に陥ります。
失った自尊心を取り戻すことは容易ではありません。
軽度ADHDの症状を持つ子供は、日頃から好奇心に突き動かされて行動しています。
Contents
ADHDとは

注意欠陥多動性障害といい、
不注意優勢型 多動性・衝動性優勢型 混合型 の3つの型に分けられます。
軽度発達障害とは
知的障害を伴わない発達障害、ADHD 自閉症スペクトラム 学習障害
部分的な発達の遅れがあり、発達のアンバランス、デコボコと称されます。
軽度は症状が軽い?
軽度という表現から誤解を招きやすく、能力はあるのに集団の中で誤解されたり不適応をおこすなど対人関係に問題を抱えやすく、あくまでも知的障害に限定したもので、障害が軽度という意味ではありません。
こちらの記事もご覧ください→知的障害(精神遅滞 )は成長とともに知能の発達は追いつくか、とりやすい行動とは
ADHD子供の割合
学齢期(6~15歳)で3~7% 30人いるクラスに1~2人いることになります。
男女比は、男の子のほうが女の子より多く女の子の3~5倍多いといわれます。
ADHD子供の症状
不注意
- 忘れ物やなくし物が多い
- 整理整頓が苦手
- 行動が遅く、手際が悪い
- 気が散ってよそ見ばかりしている
- やるべきことを最後までやらない
(幼児期はいつも人の話を聞いてないようにみえる 何回言っても同じまちがいをする)
多動性
- そわそわ落ち着きがない
- じっとしていられない(離席が多い)
- しゃべりすぎる
(学童期中期以降は多動が少なくなるが、授業中座りながら身体をくねくね動いていたりする)
衝動性
- 質問が終わる前に答えてしまう
- 他人への批判や妨害、邪魔をする
- すぐカッとする、キレやすい
- 非難されると過剰に反応する
- 順番が待てない
(1 興味・関心・活動の抑えにくさ 2 攻撃性・刺激を求める欲求の抑えにくさ )
併発合併しやすい障害
- 他の発達障害
- 気分障害
- 後遺障害
- 反抗挑戦性障害
- チック
多い子供の誤診
診断基準は、症状の期間、同年齢の子供と比べ質と量が顕著である。
診断基準の項目が,何項目当てはまるか診ていきますがあいまいさが残ります。その原因は、
- 子供の状態が場所や状況その時で違ったりする
- 子供の行動が年齢、発達により変化する
- 子供の情報が親や幼稚園、学校(先生)により異なる
起こりやすい事故
交通事故 ー 自転車で暴走する、車道に飛び出る
水の事故 ー 海や川での溺水
火の事故 - 火のいたずら(ぼや)、やけど
最大の問題点(自己制御力)
ADHDの自己制御力の欠如です。(衝動性の欠如)
じっとしていられない、待てない、話が聞けない、注意が持続できない、やってはいけないことをやめられない、など。
その原因は、
- 周囲の状況を把握できない
- 経験を生かせない
- 見通しがなく計画的に取り組めない
更にそれをうまく説明できず、助けを求められない。
ADHDのある子どもへの指導ポイント(いかに自己制御能力を高めるか)
ADHDのある子供の指導にはスピードが求められます。即決して正しい方向へ導かねばなりません。教師としても、親としてもかなり熟練が必要です。対応のスピードを上げるには、十分にADHDを理解し、起こる可能性のある種々の場面を想定し、その状況に備えなければなりません。何事も不意を突かれてはとっさの判断と対処が難しくなります。「想定の範囲」を広くし、どう対応するか、頭の中でも練習して、整理しておくことです。以上から、ADHDのある子どもへのポイントは「いかに備えるか」につきることがおわかりいただけるかと思います。
イラスト版ADHDのともだちを理解する本 こんなときこうする、みんなでなかよし応援団 腹 仁 + 笹森洋樹 p111
親の具体的な対応
1 根本的な問題の解決は不可能
成長とともに能力も伸び関心も増え、新たな問題行動が生まれ複雑になる。
2 忍耐強く子供の障害とつきあう
原因追及して解決しようとせず、確実に今できたことをほめる。
3 物事の善悪を子供の心に訴えない
人に共感すること、心の理解が難しい。(好奇心に突き動かされて行動している)
4 行動だけを見て、行動を変えていく
親子関係をこじれさせない。
5 今できていることを見つけることが基本
肯定的な行動に注目を与える
6 よい行動を即座にほめ、誤った行動を制限する
叱るより自分の行動の結果がどうなるかを教えるほうが有効
7 現状の維持が大切
活動能力が向上し問題がエスカレートするため。
8 自尊心を傷つけない
二次的な問題を予防する
9 早期に専門家の協力を得る
発達障害の正しい知識を得て、障害特性を知る
起こりやすい二次障害
学齢期 ー いじめ、不登校、ひきこもり、非行、家庭内暴力。
思春期 ー うつ、ニート、依存症など。
親や先生からの繰り返しの非難により、投げやりな態度、たまったイライラから反抗的になる。
自尊心の低下 → 自発性・継続性の欠如 → 被害者意識 → 不安、攻撃性
失った自尊心は、後から取り返すことが出来ないだけではなく将来の二次障害の要因になる。
容易なことではないが将来重要なポイントになる。
二次障害を防ぐ
1 親が子供のADHDに気づく(早期発見)
2 子供に年齢相応の扱いをしない、気づいた点は補い失敗をあらかじめ防ぐ。
3 トラブルに即介入し即解決する。(早期介入)
失敗を制御させても定着しにくい、それよりもどうしたらトラブルを回避できるかを具体的に教える。
こちらの記事もご覧ください→ADHDは遺伝が主な原因 ADHD親の特徴と子どもの確率
学齢期に適切な診断を受ける重要性
思春期までに適性を見つけることの重要性 - 発達アンバランス症候群を引きこもりにしないために
新奇追及傾向や独創性、あくなき知的好奇心は長所にも短所にもなる症状で、過集中傾向もあわせてうまくプラスの方向に活用できれば、自分の才能や能力に合った職業に就き、思う存分、独創的な仕事をやることができ、結果的に素晴らしい業績を残せる可能性があります
発達障害を仕事に活かす 星野仁彦 p204~
発達障害は軽度であれば、様々な業界で活躍している人が多く、大学教授、学者、研究者、医師、教師、弁護士、官僚、役人、超一流企業企業、専門技術など、企業や行政の中枢で組織を引っ張って指導し、業績を残す例も多いのです。
しかし逆に、興味関心の向く仕事が見つからず、長続きせず天職を繰り返して引きこもってうつや依存症の二次障害を引き起こす人も多くいます。
こちらの記事もご覧ください→知的障害を伴う自閉症ASDの子供の行動障害を軽減する 自閉症の世界、才能とは
まとめ
発達障害ADHDの人は、子供に限らず大人も自尊心が低いといわれます。失敗が多く、叱られることが多かったからです。
その叱り方も適切な方法でない場合、その後問題を更に大きくしてしまう可能性があります。
自尊心ははっきり目に見えるものではないので分かりにくいですが、その後の子供の将来に大きく影響することは間違いありません。
そのカギを握るのはやはり一番は親であり、正しい認識と支えが重要になります。焦らず一人で抱え込まず、周囲の人の協力や理解が必要です。
参考文献
軽度発達障害のある子のライフサイクルに合わせた理解と対応 田中康夫
軽度発達障害の理解と対応 中田洋二郎