高機能広汎性発達障害を含む大人の自閉症は、空気が読めずマイペースで自分勝手な人と思われがちです。
しかし、それは決して性格ではなく脳の機能不全が原因となる特徴です。
職場や家庭で、なぜそうした行動になってしまうのでしょうか。
大人の高機能広汎性発達障とは

知的障害を伴わないアスペルガー症候群と高機能自閉症をいいます。
(高機能とは機能が優秀と言う意味ではなく知的障害より基準が高いことを表します)
以下の2つを総称して自閉症スペクトラム障害 ASD(広汎性発達障害 PDD)といいます
自閉性障害(言語発達に遅れがある)
- 高機能自閉症{自閉傾向が強く知能指数IQが70以上ある 知的障害を伴わない}
- 低機能自閉症{自閉傾向が高く知能指数IQが70以下 知的障害を伴う(カナー症候群)}
アスペルガー症候群 (知能が高く言語の発達の遅れはない)
自閉症スペクトラム障害
アスペルガー症候群
高機能自閉症 低機能自閉症 |
言葉の遅れなし (独特の言葉使い)
言葉の遅れあり 成長により目立たなくなる 言葉の遅れあり |
これらを自閉症スペクトラム障害といい、上になるほど知能が高い。
この3つの間にはそれぞれ境界がなく、グラデーションのように連続している。
スペクトラムとは、連続体と言う意味があります。
大人の高機能広汎性発達障害の特徴
高機能広汎性発達障害人の特徴の共通点は、大きく分けて3つあります。
- 社会性の障害
その場の状況や相手の気持ちを察することが出来ず、対人関係の問題が起きやすい。
- 言語コミュニケーションの障害
言葉の遅れはないが、人の話を聞くことが苦手で会話が嚙み合わなかったり的外れな返答をしたりする。
言葉の理解や使い方が独特で字義通り受け取る傾向もあります。
- 想像力の障害
こだわりが強く融通が利かない。同じ手順で変化を嫌う。
大人の高機能広汎性発達障害
高機能広汎性発達障害は、障害特性(特徴)から思ったことをそのまま口にしてしまい、周りから顰蹙や怒りをかいやすかったりします。
同じ発達障害のADHDの言動と重なりますが、高機能広汎性発達障害はコミュニケーションが苦手で人とあまり関わらない傾向があります。
自閉症の人の特徴で、中核的になるこだわりについては、人間関係が難しくなる問題の一つです。
子供時代から、おびただしいこだわりに縛られ柔軟性が無く融通が効きません。興味の範囲も極端に少ないといわれます。
自分の好きなことには何時間でも熱中し、関心興味のないことにはおろそかで無頓着。
そのため一般の常識がないことがあり、子供時代は親の手助けがあるのでよいのですが大人になってやるべきことを放置したりします。
ものごとを決めつけて考えやすく、気持ちの切り替えが苦手で急な変更に強い不安を感じパニックになりやすい。
こだわりは想像力の欠如で、将来の予測や状況認知、自己他者認知(人間理解)に直結します。
まじめで習慣や規則を守りたがる高機能広汎性発達障害の人は、家族はもちろん職場で上司にも注意してしまったり、
相手との適切な距離が分からず、近すぎたり馴れ馴れしかったり、反対によそよそしかったりします。
気持ちの交流が乏しく一方的であれば、関係が長続きせず、家庭や職場でトラブルになり、離婚や転職が多くなる原因になります。
自閉とは
じへい(自閉)
心理的に自己の殻にとじこもり、外界の現実に関心を示さないこと。統合失調症の特徴的症状の一つ。 大辞林 第三版の解説
自閉とは、家の中に閉じこもるという意味でありあせん。
他者への関心、心の交流を示さない、または乏しいことです。
大人の高機能広汎性発達障害 特徴と原因
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- 自己と他者を同時に意識できない
- 他者を顧みない言動
- 自己抑制に乏しい
- 自分のこだわりを持つ
軽度であれば周りが気付くこともありません。
また、本人が障害の特性を自覚することも難しい。
発達障害者はそもそもメタ認知(自分自身のものの見方や考え方に気づくこと)が弱いため、自分自身を客観的に正しく認識する「自己認知」が苦手です。また、他者を正確に認識する「他者認知」が苦手です。 発達障害を仕事に活かす 星野仁彦 p97~
まとめ
アスペルガー症候群の妻が、夫と心の交流がなく一方的な夫婦の関係に悩んで「カサンドラ症候群」という精神疾患になることは知られています。
発達障害の特性は、人がなぜ悲しむのか分からないことと言いかえられるかもしれません。
しかし、特性の困難を抱え健常者社会で高機能広汎性発達障害(自閉症者)の人も生きづらさをかかえています。
コミュニケーションの問題は家族の中で始まります。理解し支え合うためには障害の特性を互いに知ることが大前提になります。