本人と家族の生活に大きな崩壊をもたらす行動障害は、知的障害への理解と適切な関わりによって軽減することができます。
知的障害の人はなぜそのような行動をとってしまうのでしょうか。
彼らが、世界や人をどのように感じ、どう理解しているのかをまず想像してみることから理解が始まります。
彼らを援助していく上で大切なこととは?
行動障害とは?

多くに知的障害、コミュニケーションが苦手な自閉症、そしてADHDのある子どもや大人の不適応な行動や問題行動をあらわす用語です。
幼児期や小児期、青年期にかけてみられる精神障害のなかの一つであり、医学用語ではありません。
特に成長期である中学、高校時期やその後に問題が大きくなる場合が多い。
日本に強度高度障害の人はおおよそ8000人いるといわれています。
生まれた時から強度行動障害というわけではありません。
ではなぜ彼らはこのような行動を起こしてしまうのでしょうか。
行動障害の原因
行動障害は一つの原因だけではなくいくつかの原因が相互作用に影響されおこるといわれます。
- 生物学的原因 - 遺伝による障害特性(認知能力、コミュニケーション能力、衝動性、こだわり、感覚過敏)環境(栄養不良、感染症、崩壊した家庭環境,ネグレスト)
- 心理的原因 - 養育者との関係(養育者により、言語、知的能力、情緒などの機能の安定度)
- 社会的原因 - 貧困、失業
知的障害とは?
知的発達に遅れがあり、人間関係や社会的なルールの理解ができずトラブルをおこす。
主な診断は、IQ(知能指数)によります。
知的能力障害の検査
境界知能 IQ70~85
軽度知的障害 IQ50~70 中度知的障害 IQ35~50(一般の理解) 重度知的障害 IQ20~35 最重度知的障害 IQ 0~20 (寝たきり) |
知的障害者の心理的問題
環境に敏感でストレスを抱えやすく、感情が高まり情緒不安定になりやすい。
そして知的障害の人は、劣等感や被害者意識を抱きやすく自身を失い委縮していたりします。
なので周りの人の些細な言動から、怒りやすかったり攻撃的になったりします。
その他、認知能力や自己抑制能力が弱く、訳が分からずパニックに陥りやすい。
このことから、知的障害の人は虐待を受けていることが多くその体験も大きく影響します。
これにより、フラッシュバックや突然騒ぎ出したり、急にキレる、乖離状態になったりします。
その記憶が何かあるたびに、人の注意が受け入れられず精神状態も悪く悪循環になっています。
養育者側の問題
養育者が、子どもの障害の理解が不足している場合です。
知的障害児はその年齢でできないことが多くあるのに年齢相応の要求をしたり期待をかけられ、それに応えられず不適応がおこる。
養育者に心の余裕がない場合、その不安定さは子どもにも反応し育てにくくなる。
親の障害に対する認識不足が、子どもの対人関係能力や様々な心理的な発達に歪みや遅れがあらわれる。
こういう環境が長く続くことで、学校や施設でますます手に負えない状態になる。
知的障害があるから虐待に発展してしまった、虐待があるから知的能力に遅れが生じたと両方が考えられます。
発達障害は、親からの遺伝的要因が高いため、養育する親の側に障害があることも考えられます。
その場合、虐待があるために知的な発達を遅らせることや、子供の障害に全く気が付かないことも考えられます。
虐待は知的能力だけではなく情緒的にも問題をもち、行動障害へとつながりやすい原因となる。
こちらの記事もご覧ください→ADHDは遺伝が主な原因 ADHD親の特徴と子どもの確率
相互関係の問題の結果
多くは、知的障害者への養育者や施設者側の十分でない理解と対応のまずさが原因だと指摘されています。
結果的に知的障害者が、日常に安心感や満足感を得られず情緒の安定が保てられていない。
謝った行動や思考パターンの習得で繰り返していってしまう。
よって、大人の指示に反発し暴れて拒否をするなどの行動障害としてあらわれる結果となる。(二次障害)
こちらの記事もご覧ください→ADHDの原因は遺伝と環境 子どもの二次障害を防ぐ親の関り
行動障害の種類
[攻撃行動] 他人に対して (例)髪の毛をひっぱる、蹴る、叩く、つねる、ひっかく
[自傷行動] 自分に対して (例)頭を叩く、手をかむ、眼球を指で突く、皮膚・爪をむしる
[破壊行動] 物に対して (例)物を投げる、家具を壊す、布や紙を引き裂く
[異食行動] 非食物を食べる(例)タバコの吸い殻、シャンプー、ペンのキャップ、寝具
[常同行動] 傍からは無目的に見えるような行動の繰り返し (例)前後に身体を揺らす[固執行動] 何かに対する異常なこだわりや執着 (例)ドアの開け閉め、衣服の着方、物の収集
[その他の行動] 逃走、固まる、汚物をぬる、つばを吐く、わめく、盗む、性的な問題https://www.behaviorsupport.jp/
行動障害の例
○ 食事関係 (拒食、異食、偏食)
○ 物こわし (器物破損、服破り)
○ 他害 (かみつく、叩く、ける、つねる、なぐる、頭突き、粗暴、目を突く)
○ 自傷 (頭たたき、顔たたき、傷いじり、爪はぎ、髪抜き、腕かみ)
○ 異常な動き (徘徊、飛びだし、多動)
○ こだわり (場所、物、人、予定)
○ 睡眠障害 (不眠、起きだし、昼夜逆転、浅い睡眠、寝つきの悪さ)
○ 騒がしさ (奇声、うなり、大声)
○ 排泄行為の障害 (便の壁ぬり、便食い、便いじり、小便飲み、生理の扱い)(行動障害研究会1988)
心理的原因の改善
自身 - 自分が必要とされという感覚
安心感 - 自分のままでそこにいてよいと思える感覚
信頼感 - 求めに対応してくれるという感覚
援助する側は、彼らに無理をさせず臨機応変に対応し、自己肯定感持てるように配慮する。
まとめ
行動障害をおこす知的障碍者にかかわり援助をしていくには、障害の特性をよく知ることが大切です。
なぜなら今起きている行動障害は、本人の障害特性と不適切な養育環境との摩擦から行動障害に発展していった経緯があるからです。
そしてそのことが、彼らからはどのように感じていてどう理解しているかということを想像することです。
世の中のルール規律がそもそも、大多数の性質の違う定形発達(健常者)によって決められいるがために、知的障害者は日頃から生きにくさを感じているのです。
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