大人の発達障害が軽度で問題になってくるのは、相反して2つあります。
知的に遅れがないために障害が気付かれず、困難を抱えているのに一般の行動を求められることによっておこる不適応や二次障害。
もう一つは、能力が高く、人の上に立つ立場になった場合です。それはなぜなのでしょうか。
実際に、軽度の発達障害の相談ケースのほうが圧倒的に多いといいます。
大人の発達障害

発達障害は主にADHDとASDがあり、知的障害を含め複数が伴っている場合、そして重度の人から軽度の人がいます。
発達障害は能力の偏りといわれ、健常者が平均的であるのに対し、苦手なことと得意なこととの偏差が大きく、程度も千差万別です。
症状に困っている人から、並みはずれた能力で地位が高い人もいます。ですので健常者はその中間に多く位置しているといえます。
軽度発達障害とは
知的障害を伴わない発達障害のことです。能力はあるのに、集団の中で誤解されたり不適応をおこすなど対人関係に問題を抱えやすい。
軽度とは、あくまでも知的障害に限定したもので、障害が軽度という意味ではありません。
以前は、知的な遅れを伴わない高機能自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害などを「知的障害が軽度である」という意味で「軽度発達障害」と称することがありました。しかし、知的な遅れがない人の中にも、その他の部分で重篤な困難さをもっている場合があります。そのことから、「障害そのものが軽度」と誤解される可能性を危惧して、最近では「軽度発達障害」ということばは、あまり使われなくなってきています 発達障害情報・支援センター
コミュニケーションの隔たり
コミュニケーションパターンが、そもそも健常者と異なります。例えばどんなふうに違うのでしょうか。
ある当事者会(本人、家族)でASDの女性(50代)と知り合いました。その女性から「ぜひこのことをブログで伝えて」と頼まれました。
その内容は、日頃からの健常者に対する疑問です。彼女はとても論理的でものごとを一つ一つよく考察していて、その徹底さに圧倒され話に入る隙も無いほどでした。
1 健常者はなぜ、心にもないことを口にしたりするのか?
例えば、別れ際次回また会いたいと思わない相手にまで「また会いましょう」と言うのか理解できない。社交辞令だったのか、分からずに何度も本気に受け取ってしまったことがあったといいます。
2 なぜ「会話はキャッチボール」というのか?
彼女曰く「会話はドッチボール」である、もしくは「会話は玉入れ」であり「キャッチボール」ではないと主張します。
自分は納得できないことや主張したいことを、日頃から曖昧にせず上司にでもとことん追求するので、上司は顔を真っ赤にして拳をぶるぶる振るわせ、しまいには怒鳴らせてしまうのだそうです。しかし最近になって、健常者がはっきり言わないことは、相手に対する思いやりでもあると少し理解できたといいます、がその日の当事者会開始早々、発言するも、ものの3分で家族の当事者を怒らせてしまいました。
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ASD(アスペルガー含む)特徴
コミュニケーションとは、相手に気持ちを伝える意ではなく、勝ち負けと考えたりして、拘ることがあり絶対に謝らなかったりする。
中略 冗談、比喩、ほのめかし、皮肉は言葉通りとってしまう。大人びた話し方や、正確に話そうとして回りくどい話し方になってしまう。
中略 相手の表情や身ぶりの理解も困難である。無表情に話し、他の人の微妙な感情が読めないことがある。 発達障害コミュニケーション P16~
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ADHD 特徴
不注意…集中力にむらが大きい、忘れ物 話を聞いてない、指示に従えない、へ理屈順序だてが困難、外からの刺激で注意散漫
多動症…手足のそわそわ、椅子上でモジモジ 席を離れる、走り回る、高いところに登る 喋りすぎる、静かに遊べない、じっとしておけない→ 成長と共に改善傾向多い
衝動性…質問が終わる前に答える、順番を待てない、他人を妨害邪魔、一番が好き 発達障害コミュニケーション P8~
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軽度なほど問題な理由
障害が重ければ、理解や支援によって守られますが、軽ければ理解がなく、反対に指摘されることが多くなります。
(学童期、知的に問題が無く通常クラスに在籍し定型発達の子どもと同じ指導を受けると、個別で支援を受けている発達障害の子より不適応を呈しやすくなります)
また、軽度なために障害に気付かず、特性の傾向を自覚しにくいことです。
最も問題なのは、気付かないまま人の上に立つ立場になった場合、まわりに与える影響力です。
勝ち負け、拘り、一番が好き、こうした完全主義的な上昇志向は、コミュニケーションでの支障が避けられなくなってきます。
相手の些細なミスを絶対に許さない、融通がまったくきかない、他人に対して上から目線だったり厳しすぎたりする、すぐに相手を馬鹿にする、すぐにキレる、言葉尻を捉えて執拗にくちで攻撃する、相手を徹底的に論破する、人を傷つけても平気、常に自分が正しくて相手が間違っているなどというような言動をとり、相手を精神的・身体的にとことん追いつめる等をします。 P4~
本人は「自分には問題がない」「うまくいかないのは相手がわるいからだ」と頑なに思い込んでいて問題は自分のほうにあるなどというような自覚はまったくといっていいほどありません。 P6~
つまり彼らは自分の特性を知らないがゆえに、他人に対しては「困らせる人」になって人を傷つけ、自分に対しても傷つけ追い詰めていくのです。 発達障害を仕事に活かす P7~ 星野仁彦
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共存を考える
自分の親や上司であれば、嫌われれば生き残っていくことが厳しくなってきます。
なぜそのような言動になるかは、特性で脳に関係します。記憶力に優れていれば、嫌なこともいつまでも忘れられずにいたり、忘れやすければミスにつながったり
頭の回転が早ければ、せっかちになります。決して性格ではありません。
そのことを理解し、どうすれば相手に伝わりやすいかを考えていかなくてはなりません。
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自由と主体性
発達障害の人にとって自由と主体性は、最も重要なことであり必要なことです。これらを阻まれることが一番のストレスになります。
私の親をはじめ家族には発達障害があります。長年知らずにきましたが、最もしてはいけないことは「否定」です。
矛盾していますが、分かり合おうとしないことが、互いにとっていい関係が築けます。討論をしないことです。近い関係でも、距離感が大事であると思うのです。
まとめ
違いは埋めようとしなくていい。なぜなら、幸せの形もそれぞれ違うからです。自由に生きることこそが、発達障害の人にとって一番の幸せだからです。
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